市立宇和島病院名誉院長 近藤俊文先生
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1 春木先生の本は『腎移植をめぐる母と子、父』と言うのがありました。生体臓器移植は、ドナー・レシピエント、その家族、に複雑な心理模様を生むのは当然ですが、それを精神科医で、自身も永年透析をなさってきた先生が精神医学的、社会医学的な問題として取り上げているようです。読んでみます。
2 先生の論文は「移植」誌に連載で「腎移植の精神医学的問題」としてありました。本になっているかどうか確かめます。
3 いづれにしても、初心に返って脳死腎をどう増やすか、が再検討されなければなりません。
4 また、死体腎と生体腎で移植成績に変わりがないという米国の論文が出ました。脳死じゃなくてもいいのです。死体腎についても再検討する必要が大いにあります。
万波先生のお人柄について
彼は一言で言って「欲」の無い男なのです。今時とても珍しい人格です。「赤ひげ」だという人もいますが、老生は「チョット品の乏しい良寛さまじゃ」と言ってきました。良寛さまも欲のない人だったそうですから。
1まず、物欲がない。
昔、移植の手伝いに来ていた下関市立病院のS医師が警察につれていかれた、と院長の私に報告が事務からありました。なんでも、日中刀をぶら下げて歩いていた、というのです。
「万波先生、なんじゃねこれは?」
「ああ、あれはなあ、Sが刀が欲しい言うけん、一丁持ってきてやったのよ」
「どんな刀かね?」
「もちろん古刀よ。わしゃの岡山の蔵にはあんなもんゴロゴロしてるわ。
そんで一本持ってきてやったのよ」
最近のどっかの週刊誌の記事に「十年以上前に買った家に独りで住み、十年以上前に買った中古車で通勤している」とある。制服は突っかけに、白衣である。夏はランニング一丁。もちろんズボンは穿いている。
2 金銭欲もない。
「せんせー、なあ。ウチにある国産のバイポラー(焼灼メス)な、ほんまボロや。アメリカ産のヤツ買うてくださいや」
「なんぼするのよ?」
「なんぼか知らんが、安いもんよ。国産の3-4倍くらい出しゃあるわ」
「うーん、そんでも2百万前後はかかるな。まあ、来年の予算よ」
しばらくして、万波先生が自分で買って手術室に持ち込んでいるという噂。
「なるほど、こりゃ、国産よりずっと良さそうだな」
「ハッハッ、楽ちん楽ちん」
万波先生ハッピーそうに手術していた。外科の先生たちもこれを使わせてもらって、その性能に感心。院長を強硬に突き上げに来た。
3 名誉欲はからきし無い。
「万波先生、あなた、副院長になる順番よ。なるか?」
「せんせー、こらえてよ。わしゃそんなモンになるのなら、病院辞める」
「どうしてもか?」
「わしゃ、手術さえさしてもろうたらえーんや」
「じゃ、あんたより若い○が副院長になるぞ」
「そんなことわしゃには関係ねー。今まで道理にしてください」
「しかたないな」
にやりとして、足取りも軽く院長室を出て行く万波先生ではあった。
4 出嫌い。
彼がどっかに出て行くのは、移植の指導に行く時だけである。彼が観光やその他の理由、たとえば学会出張(一回だけは、学会に指名
されてシンポジストとして行った)など、に行った記憶が拙老にはない。
しかし、365日、24時間、いつでも何かがあると病院にいた。ケータイ が出来てからは、患者に番号を教えているようだ。
5 きわどいウイットをとばす偽悪家である。だから、よく誤解されてしまう。
だいたい偽悪家に悪人はいない。偽善者がうようよしている最近の日本には滅亡危惧種でレッドブックに載せる必要がある人種である。
6 凄い勉強家である。
だから、手術が上手いのだ。病院で犬をたくさん飼って、 動物実験するものだから、やかましと患者さんから苦情が来て閉口した記憶もある。移植最先端の技術を一貫して磨いてきた。拙老はそれを身近に見てきた。彼に言わせれば、日本の学会はあまり役に立たず、インターネットで最新情報を入れ、直ちに論文をダウンロードすれば、最新の知識が手にいるという。その通りだ。不肖ながら拙老もそうしている。
学問のグローバリゼーションであります。