移植への理解を求める会 会報第11号
与野党の国会議員80人
超党派の会が修復腎移植容認
第三者委設置条件に 議員立法も
与野党の国会議員約80人で組織する議員連盟「修復腎移植を考える超党派の会」(会長・杉浦正健元法相)が、5月13日、第三者委員会の設置を条件に、修復腎移植(病腎移植)を容認する見解をまとめました。病腎移植をかたくなに拒否する厚労省と学会に「NO」を突き付けた形で、両者が、これを受け入れない場合は、議員立法も考えているということです。
移植への理解を求める会の声を、真剣に聞いていただいた議員連盟の先生方のご理解とご尽力で、レストア腎移植の問題は、大きな転換点を迎えました。
求める会歓迎 県庁で記者会見
移植への理解を求める会は、この日、愛媛県庁で記者会見を開き、この見解を歓迎するコメントを発表するとともに、議員連盟にレストア腎移植実現に向けて尽力を願う要望書を送付しました。
会見では@修復腎移植を考える超党派の会への要望書(お礼とお願い)を本日中に杉浦会長に送付するA超党派の会が修復腎移植を容認する見解をまとめたことを歓迎し、患者にとって大きな希望が見えてきたと受け止めているB署名は約60万人分を追加し、合計70万人以上になった。100万人を目指して、今後も続けるC修復腎移植が一般医療として実施(再開)されるまで、理解を求める会の活動を全国に広げていく−ことなどをアピールしました。 修復腎移植問題についての見解
修復腎移植問題を考える超党派の会
1 修復腎移植をめぐる諸論点について
(1)万波誠医師、万波廉介医師による修復腎移植症例について
・ドナーの腎疾患がネフローゼ、腎石灰化嚢胞などの良性疾患であった症例の中には、腎摘出前の内科的治療法の実施、良悪性鑑別のための画像診断等に十分とはいえない点があった可能性がある。これらの症例における腎摘出の適応が適切であったかについては、疑問がある。(中略) なお、上記評価については、修復腎移植の実施された時代的背景や、宇和島市という地域的背景、及び実地医療は医師患者間の信頼関係に基づき個々の患者の多様な病体に即して実施されるものであるという特徴を考慮する必要がある。
医療の結果についての事後的な第三者的評価は、当該診療当時の当該地域の医療の実情の考慮が不十分となり易いことは頻繁に指摘されている。
万波誠医師及び万波廉介医師による修復腎移植症例において、ドナーの腎摘出の適応やインフォームドコンセントの手続が、今日の学術上の議論で求められている要件をすべて満たしていなかったとしても、直ちに不適切であったと断じることはできないと考えられる。
(2)修復腎移植の現状について
・直径3〜4p以下の小腎癌については、部位によっては、部分切除及び部分切除+自家移植の適応がある。今後は、より機能温存的なこれらの手術方法が普及していくことが、患者の利益のためには望ましいと考えられる。しかし、現状では、合併症や再発の危険性を患者に説明すると、腎全摘を希望する患者も多数存在しており、また実際には、部分切除及び部分切除+自家移植の実施割合は、未だ少数にとどまっている。
今後もなお、直径3〜4p以下の小腎癌について、腎全摘が行われる症例が相当割合あるものと考えられる。
・修復腎移植における腎移植の生着率については、死体腎移植に劣るとする見解がある一方、適切な年齢補正を施せば死体腎移植の場合と同等であるとする見解が見られる。
・ 移植腎の絶対的不足の現状に鑑み、次善の方策としての修復腎移植の試みについては、豪・伊・米などの諸外国で積極的に評価する専門家が存在する。
(3)今後の修復腎移植の在り方について
・移植腎の絶対的不足は看過し得ない問題であり、その解決のための選択肢として、修復腎移植の適応は、第三者委員会によるドナーの疾患の客観的な評価や適切なインフォームド・コンセントの確認等を要件とすれば、認められると考えられる。
例えば臨床研究として実施する場合には、「臨床研究に関する倫理指針」の遵守が要件となるであろう。実地医療として行う場合も、同様の要件が必要と考えられる。
・保険適用については、修復腎移植の臨床実施例に関する知見が相当量蓄積されてきていることに鑑み、「高度医療」や「先進医療」の枠組みでの保険診療との併用を認めていくべきものと考えられる。
さらに、今後の実績の多角的な評価を行い、修復腎移植自体の保険収載についても検討していく必要があろう。
(4)市立宇和島病院、宇和島徳洲会病院、万波誠医師らに対する行政処分について
・修復腎移植は、既存療法としての腎移植の枠組みの中での個別事例について問題にされてきたものであり、既存療法としての腎移植と異なる特殊療法ないし新規療法として、問題とされてきたものではない。
保険医療機関及び保険医療養担当規則第18条は、「保険医は、特殊な療法又は新しい療法等については、厚生労働大臣の定めるもののほか行ってはならない。」として特殊療法等の禁止を規定しているが、修復腎移植が同条にいう「特殊な療法又は新しい療法等」に該当するかは明らかとはいえない。
・医科診療報酬点数表によれば、「K780 同種腎移植術」の「診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意事項について」(平成18年3月6日 保医発第0306001号)の欄に、「腎移植を行った保険医療機関と腎移植に用いる健腎を採取した保険医療機関とが異なる場合の診療報酬の請求は、腎移植を行った保険医療機関で行い、診療報酬の分配は相互の合意に委ねる」との記載があるが、本記載は、あくまでも移植に用いるドナーからの腎採取とレシピエントに対する腎移植が、異なる保険医療機関で行われたという特殊な場合の診療報酬請求の方法について規定したものにすぎず、修復腎移植の保険診療上の取り扱いとは何らの関係もない。
そのほか、同記載を含め、修復腎移植については保険上の診療報酬請求が認められないとの趣旨の記載を認めることができない。 ・社会保険診療報酬支払基金は、市立宇和島病院、呉共済病院における修復腎移植症例に関する診療報酬請求手続きについて問い合わせ及び審査を行い、修復腎移植である旨の説明を受けた上で保険適用を認めている。 ・この度の市立宇和島病院、宇和島徳洲会病院、万波誠医師らに対する行政処分については、以上のように、修復腎移植に関する問題を理由とするのであれば、理由が認められるとはいえないと考えられる。 仮に、他の保険診療請求上の問題を理由とする処分であるのならば、この度の処分が、主として修復腎移植に関する問題を主たる対象として検討されてきたことが経過上明らかである点から考えて、手続的適正の観点から疑問がある。
要望書
2008年5月13日
修復腎移植を考える超党派の会
会長 杉浦 正健様
修復腎移植の推進について
(要望書)
移植への理解を求める会
代表 向田 陽二
拝啓 日ごろ、移植医療の推進に対し、多大のご理解とご尽力をいただき、まことにありがとうございます。さて、国会議員の先生方で構成する貴「修復腎移植を考える超党派の会」が、かたくなな厚生労働省や移植関係学会の姿勢とは反対に、ドナー不足の危機的状況などを考慮し、修復腎移植を「容認できる」とする見解を、本日まとめられました。
この適切、妥当な見解に対し、私たちは患者の立場から、今後、腎移植推進の切り札として大きな役割を担い得る修復腎移植が早期に実施(再開)されるものと、期待するとともに、修復腎移植に対する先生方の深いご理解とご尽力に、心から感謝の意を表します。
私たちは、一人でも多くの腎不全患者を救おうと、やむにやまれぬ思いから修復腎移植を進めてこられた宇和島徳洲会病院の万波誠先生とそのグループの先生方を支援するとともに、修復腎移植の妥当性(安全性と有効性)を主張し、これまで11万人余りの署名簿を厚生労働大臣に提出するなどして、その推進を訴えてきました。
しかし、移植関係学会の見解を踏襲する厚生労働省は、修復腎移植を全面的に否定し、しかも、その移植を進めてきた万波先生らと、関係2病院(市立宇和島病院と宇和島徳洲会病院)に、根拠のない不当な処分をしようとしています。
超党派の会の先生方には、今後とも私たち患者や医療関係者の声を大いに聞いていただき、修復腎移植が闇に葬り去られることのないよう、また万波先生や関係病院が不当な処分を受けることのないよう、ご尽力いただくことを切望いたします。心から感謝の意をこめて。
敬具
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レストア腎移植を考える会開く
4月26日・松山 堤・高杉先生が講演
移植への理解を求める会(向田陽二代表、1400人)とえひめ移植者の会(野村正良会長、100人)の共催による記念講演会「レストア腎移植を考える」が4月26日、松山市山越町の愛媛県女性総合センターで開かれました。講師の堤寛(ゆたか)藤田保健衛生大学医学部教授(病理学)と、高杉敬久広島県医師会副会長が、それぞれ「レストア腎移植と腎不全治療」「腎移植をもう一度考える」をテーマに、レストア腎移植の妥当性と有効性について講演され、県内外から参加した約150人が熱心に耳を傾けました。
この講演会は、移植の推進を願う立場から、レストア腎(修復腎)移植=病腎移植の可能性と意義について、理解を深めてもらおうと計画しました。
有末さんピアノ演奏 堤先生とデュエットも
また、兵庫県加古川市で音楽教室を主宰している作曲家・編曲家、ジャズピアニスト、有末よしひろ(佳弘)さん(透析5年目、レストア腎移植を支持)のピアノ演奏とトークがありました。ピアノ演奏に先立ち、ご講演をいただいた堤先生のオーボエとのデュエットもあり、会場を魅了しました。
講演概要報告
レストア腎移植と腎不全治療
― 堤 寛・藤田保健衛生大学医学部教授
私は2006年12月、宇和島市でのレストア腎移植に関する評価委員会の一人に選ばれ、日本移植学会、腎臓病学会などのメンバーとともに参加。病理専門家の立場から徳洲会病院で行われた過去5年間の11例についてカルテを詳細に調べた。
初めに外部評価委員として感じたことを、説明したい。
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宇和島徳洲会病院の外部委員として感じたこと(1)
1)多くの症例が2回目以上の腎移植であること 2)初回移植に病腎が使われた症例の納得できる理由 3)患者さんとの長いつきあいと深い信頼関係 4)ネフローゼ症候群のドナーが、その後、病腎のレシピエントとなったこと 5)宇和島には腎臓内科の専門医がいなかったこと 6)慢性透析による患者の経済状態の悪さ 7)万波グループの移植技術の高さ 8)万波医師の患者に寄り添う姿勢 9)患者の満足度の高さ 10)技術、経験と患者との信頼関係なしには成立しない医療であること
特筆すべきは、ドナー11例のうち9人が2度目3度目の移植の方に行われた。全42例のうち、30例(71%)は2度目以降の移植である。
このように、レストア腎移植は万波医師と患者の長いつきあいと深い信頼関係の中で行われた医療である。
治療を受けた患者の満足度は高く、医師の高度な技術と信頼関係なしでは成立し得なかった医療であり、親族間での移植の可能性がほとんどのない患者の方にとって、レストア腎移植は大きな福音となるものである。
また、捨てる腎臓を使用するという発想は、だれも思いつかなかったことで、斬新で画期的で、素晴らしいものである。
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宇和島徳洲会病院の外部委宇員として感じたこと(2)
1)病腎移植の発想の斬新さ 2)悪条件の中での病腎移植の成績のよさ 3)専門委員会の結論に関する疑問 Tla腎細胞癌に対する部分切除率に対する疑問 b)尿管狭窄に対する自家移植の有効性と実施頻度 c)医療現場の状況を無視した画一的、理論的判断 4)サイエンスとしての病腎移植の面白さ
成績についても、レストア腎移植のドナーやレシピエントは高齢者が多く、そのような悪条件でも、レストア腎移植の生着率は死体腎移植に遜色がない。
ドナー年齢が70歳以上の場合を比較すると、むしろ死体腎臓移植より良好である。
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日本における腎移植生着率
病腎移植 死体腎移植 生体腎移植
1年生生着率 78・3% 78・9% 90・2%
2年生生着率 51・5% 60・6% 75・3%
10年生生着率 41・6% 44・5% 57・5%
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このような状況が分かってくると、日本移植学会等の「医学的に妥当性がない」「病腎移植はあり得ない」などの見解に対して大きな疑問を持った。
1)癌などの病腎の治療は、部分切除が本当に標準的な治療であるのか 2)他人に移植できる腎臓なら元の患者の体にもどす自家腎移植をすべき、というが、本当に、そんなに行われているのか 3)ネフローゼの腎臓の移植はあり得ないというが本当か−など。
14病院のデータから調査した結果、推計部分切除率は<中央値で16・4%>であり、約85%は全摘出していることが分かった。 また、自家腎移植はほとんど行われていないのが実態である。ネフローゼ腎の移植を受けられた方は、現在半数の方が健在である。世界でも初めてのことであり、新発見といってよい。
医療現場の実態は、移植学会や厚労省が言っている見解と大きく違う。
腎細胞癌に対する腎部分切除実施率の推計(14病院総計)
全腎細胞癌切除数 941例
腎部分切除数 136例(14・5%)
T1a(腫瘍径40p以下)286/593(48・2%)
T1a症例の部分切除率 118/267(44・2%):10病院分(平均値1)
Range0〜89・2%(実測中央値17・0%)
T1a症例推計値(14病院分)941×0.482=454例
推計部分切除率(同)136/454(30・0%)平均値2(推測中央値16・4%)
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次に移植拡大への可能性について。4p以下の小径癌(T1a症例)の全摘される数は、年間約2000個と推計される。このうち半数が使用されたなら、年間1000人にレストア腎移植が可能となる。尿管癌では、年約200人に移植が可能となる。
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病腎移植のドナー腎数(推計)
腎細胞癌T1a症例
年間約2000個(1780〜2664個)の腎臓が全摘される。
半数使用なら、年間1000人に「病腎移植」が可能となる。
尿管癌の全国推計数:50×44・4=2220例
1割使用可能なら、年間約200人に「病腎移植」が可能となる
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医療費削減の効果について。現在、透析関連医療費は、年間(2003年)約1兆2500億円。総医療費年間(同)約31兆5000億円の4%を占めており、透析関連医療に莫大な経費が使われている。
仮に年間1000人にレストア腎移植を実施した場合、年平均約154億円の医療費削減、10年間で1538億円が削減できると試算できる。仮に年間2000人にレストア腎移植を実施した場合、年平均308億円の医療費削減が期待できる。
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病腎移植の経済効果
医療費削減額推定
1年目:3211万円×1000=321億円/10年間
2年目:2805万円×1000=281億円/9年間
10年目:−346万円×1000≒35億円・1年間
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10年目の積算額:1538億円/10年間
→医療費削減額:154億円・年平均
(移植関連費用の1・2%に相当)
もし、年間2000例の病腎移植が行われれば
→医療費削減額:308億円/年(移植関連費用の2・5%)
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最後に、レストア腎移植は医療費削減にも大きな効果が期待される。
腎移植をもう一度考える
―― 高杉敬久・広島県医師会副会長
日本ではたくさんの人が臓器提供を望んでいるにもかかわらず、人口100万人当たりの臓器提供数は0.5人と、スペインの33.7人をはじめとするヨーロッパ諸国の平均16.6人、アメリカの21.5人に比べ、非常に少ない水準にとどまっている。
日本はウォークマンなど電気製品を海外に輸出して、臓器を輸入している。○○ちゃん基金を募集し、海外移植を行っている。
このような実態から、日本は「移植難民」「臓器ハイエナ」と呼ばれている。
国内での脳死移植が10年で約65例なのに比べ、欧米、フィリピン、中国などへの海外渡航移植は522人に達している。これは一体なぜなのか…。
これらの事実を国民に正しく問いかけるのが報道の役目なのではないのか。
また、脳死移植法ができてから、従来の心臓停止下の死体腎臓移植が、逆に大きく減少していることはほとんど知られていない。
このような現状の中で「摘出されて捨て去られる臓器は、待ち望んでいる人に十分な同意があるのなら、再利用できるのではないか」という病腎移植の発想は、よく理解できる。
最後に、医療は常に挑戦である。過去の常識は未来の非常識である。現在の常識で未来の可能性をつぶしてはいけない。
(講演概要報告・井手 広幸幹事)
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会報第11号 2008年 6月16日(月) 発 行 |
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